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欧州紀行報告会 – 欧州先進事例から考えるマネジメントの意味と価値|イベントレポート | HOP株式会社

欧州紀行報告会 – 欧州先進事例から考えるマネジメントの意味と価値|イベントレポート

 

2025年2月20日、HOP株式会社と音声メディア「VOOX」の共同開催イベント『未来を創るマネジメント』が開催されました。会場となったのは、三井物産グループのベンチャースタジオmoon creative labの拠点である『Tokyo Studio』。イベントでは、HOP株式会社の畑と岩崎による「欧州紀行報告会」がおこなわれ、約70名の参加者が訪れました。

■目次
1.多くの知見を得た欧州訪問
2.フィンランド:国家としての連帯と教育
3.イタリア・ブルネロ・クチネリ:「人間的資本主義」を実践する企業
4.スペイン・モンドラゴン協同組合:連帯と教育に基づく協同組合
5.参加者同士の和やかな交流

(編集 / エドゥカーレ)

HOP株式会社 欧州紀行報告会

多くの知見を得た欧州訪問

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畑 敬子 (代表取締役 CEO)

畑 敬子(以下、畑) 今日はVOOXさんのお声がけでこういったイベントを開催することになり、とても嬉しく思っています。

岩崎 春夫(以下、岩崎) まずは皆さんにHOPが何をやっているかを簡単にお話しますと、私たちは「強く美しい会社を作る」というテーマで活動しています。具体的には、スタートアップ企業が大きくなる頃、30人を超えて50人くらいになる時期や、世代交代で経営者が変わる企業を対象に、組織や人事制度づくりを中心にサポートをおこなっています。

畑:私たち、出会って10年、HOPを作って7年目になります。趣味も性格も真逆な2人ですが、トムとジェリーのように仲良く喧嘩しながら6年間やってきました。

岩崎:今回の欧州訪問の背景には、私がブルネロ・クチネリの本『人間主義的経営』を翻訳したことがあります。

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その本の舞台となったブルネロ・クチネリのあるソロメオ村を見たいというご要望を何社からもいただいたため、皆さんと一緒に行ってきたというわけです。

畑:今回はフィンランド、イタリア、スペインの3か国を訪問しました。旅の目的は「国家・企業・協同組合の先進的なマネジメントの事例を調査し、持続可能な組織運営のヒントを得ること」です。今日は皆さんにもヨーロッパを旅しているような気持ちでご覧いただければと思います。

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旅紀行の中では『HOPの悲劇』と題し、今回の旅で見舞われたトラブルのエピソードの数々がユニークな語り口で紹介された

フィンランド|国家としての連帯と教育

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畑:まず、最初に訪れたのはフィンランド。こちらでは、駐フィンランド日本国大使である岡田隆さんを訪ねました。一緒にサウナや食事を楽しみつつ、近年のフィンランドの情勢や国家という大きな組織の運営に欠かせない制度づくりについて詳しく伺いました。

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駐フィンランド日本国大使・岡田隆さんとともに

岩崎:フィンランドの人口は560万人。特徴的なのはロシアとの国境線で、1340kmものロシアと国境を接しています。歴史的にはスウェーデンに支配された後、ロシア帝国の一部となりました。そして1917年のロシア革命の際に独立し、現在のフィンランドが誕生しました。1940年のソ連との冬戦争では多くの犠牲を払い、国土の10%を失いながらも独立を守り抜いたという歴史があります。

畑:教育については皆さんご存知の通り、非常に力を入れている国で、大学までの教育が全て無償です。教育内容も詰め込み型ではなく理解重視の学習が行われており、生徒それぞれの個性に合わせた柔軟な指導を行っています。

税金は高く、社会保険の負担率も高いですが、老後を心配することがないほど社会保障が充実しています。世界幸福度ランキングは7年連続1位、ジェンダーギャップ指数は2位と、様々な面で進んでいる国です。

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そしてフィンランドは徴兵制で、常備軍が2万3000人いるのに対し、予備兵がなんと87万人もいます。また、人口の9割を収容できる地下シェルターが整備されていて、建築時にも義務付けられているそうです。

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岩崎:岡田大使曰く、隣国の脅威を国民みんなが共有しているそうです。小国なので「結束しなければあっという間にやられてしまう」という危機意識が国民一人ひとりに共有されています。これが地下シェルターや教育、社会保障といった政策の根底にある考え方だと感じました。

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イタリア・ブルネロ・クチネリ|「人間的資本主義」を実践する企業

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岩崎:次に訪問したのは、ファッションブランド『ブルネロ・クチネリ』社の本社があるイタリアのソロメオ村。ブルネロ・クチネリはプレタポルテ(既成服)の中では世界最高級のブランドです。

特徴は「人間のための資本主義」を掲げていること。従業員を大切にし、業界平均より2割高い給料を払い、残業や時間外のメール送信を禁止しています。

畑:ソロメオ村は500人足らずの小さな村ですが、ブルネロ・クチネリ社は村の活性化のために劇場や公園、図書館など様々な設備をつくりました。職人教育も非常に重視していて、無償で職人技術を教える学校を運営しています。

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岩崎:ブルネロ・クチネリの本の中に「上場がうまくいったので、修道院の修復を始めよう」というセリフがあります。少し意味がわかりづらいのですが、これがブルネロ・クチネリのビジネス観を表しています。彼は長い間、司祭から教会の修復を依頼されていたけれど、お金がなくてできなかった。上場してお金が入ったから、まずは教会の修復をする、という考え方です。これが彼の企業経営の重要な部分を表していると思います。

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岩崎 春夫 (代表取締役 COO)

畑:お昼の休憩時間は1時間半あり、全員が同時に食堂で昼食をとります。絶対に休憩をとってほしいということで、その時間はオフィスの電気も消えるという徹底ぶり。食事を終えた社員はパッと食堂からいなくなり、サッカーをしたり、本を読んだりと、思い思いの時間を過ごしています。日本の企業ではなかなか見られない習慣ですよね。

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スペイン・モンドラゴン協同組合|連帯と教育に基づく協同組合

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岩崎:最後に向かったのは、スペインのバスク地方にあるモンドラゴン協同組合です。1956年にカトリックの司祭ホセマリア・アリスメンディアリエタによって創設された協同組合は、彼がこの貧しい村に来た時、まず村人の教育から始めようと思ってつくられたのが始まりだそうです。

バスク地方では最大の企業集団で、スペイン全体でも7〜8番目の大きさです。事業は金融、製造業、小売、教育の4つを柱にしていて、傘下の組合数は80以上、組合員数は7万人という巨大な組織なんですね。

畑:協同組合とはいえ、組合員として参加するには一人約1万6000ユーロ(約250万円)を出資する必要があります。この出資金には毎年3〜4%の金利がつき、さらに組合で得た利益が資本に積み上がっていき、最終的に退職金になるという仕組みです。

岩崎: 経営組合員と一般組合員の報酬格差は最大でも9倍までと決められています。それ以上の格差は認められない仕組みになっていて、実際には4〜5倍に収まっているそうです。

また、ある組合の業績が悪化した場合には、その組合の従業員を他の組合が引き受けることで雇用を保障しています。リスクを分散させるために4つの事業分野に多角化し、景気変動に対応しているんです。

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「協同組合なのに、厳しい市場での戦いにどうやって勝ち抜いていけるのですか?」と副所長でパブリックリレーション担当のジャーマンさんに質問したところ、「私たちはソリダリティ(solidarity)つまり組合員の連帯を何よりも重視しています。そのために教育が大切なんです。」と答えてくれました。教育と連帯が、自分たちの組合集団を強くしている最大の理由だと強調していたんですね。

畑:非常に感銘を受けたのか、岩崎はこの日からソリダリティ、ソリダリティってずっと言っています(笑)。

3か国に共通する「教育」と「連帯」

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岩崎:ヘルシンキ、ソロメア村、モンドラゴンを巡って感じたことは、現代社会が「過剰流動性」に陥っているのではないかということです。

流動性(リクイディティ)とは金融用語で、リスク回避のために資産を入れ替えたり、職業や階層間の移動を容認したりすることです。流動性が高いということは、変化に耐え、柔軟で、成長を促し、イノベーションを生み出すという利点があります。

しかし流動性が過剰になると、個人のアイデンティティは薄れ、社会的連帯が弱まります。人々がどんどん移動するので責任の所在が不明瞭になり、短期的な視点が優先され、長期的なコミットメントが失われがちになるんですね。その結果として社会の分断が深刻化しています。

畑:それぞれの場所に異なる目的で訪問しましたが、共通して感じたのは教育と連帯の重要性でした。いずれも教育を通じて人々の連帯感を築こうとしています。

岩崎:人間集団・社会の構造として、ベースに教育があり、その上に理念や価値観、世界像、規範、ルールが積み重なって連帯が生まれます。

「教育が社会の連帯を作り、社会の連帯が結果として人々の自由を支えている」—これが3か国に共通する発見であり、人間社会にとって大切なものだなということをすごく感じた旅でした。

参加者同士の和やかな交流

第二部では、VOOXの日渡氏による「概念思考ワークショップ」が行われました。概念思考とは「概念を作り出し、操作し、発展させる能力」を指し、日渡氏が哲学書を読める人が会社でのパフォーマンスが優れていることに気づいたことがきっかけで生まれたものです。

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ワークショップでは「社風」をテーマに、参加者がそれを3つの要素で表現する演習が行われました。参加者は3人1組で話し合い、活発な意見交換がおこなわれました。

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続く懇親会では、欧州の食事と飲み物が振る舞われ、参加者が軽食やお酒を片手に交流を楽しみました。

料理を手がけたのはKitLABOの北村陽子氏。「訪問した国のお料理で旅をする」というコンセプトのもと、フィンランドの『リハプッラ』やスペインの『パンコントマテ』、イタリアの『カプレーゼ』など華やかな料理の数々が提供されました。

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また、この懇親会には複数の協賛も。balance社からは蜂蜜、Stillwater社からはコーヒー『The days』の試食と物販、EATALY社からはワインの提供があり、イベントをさらに彩りました。

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会場内には笑顔が絶えず、参加者同士の活発な交流が続く様子が印象的でした。

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イベントの最後には、EATALY社からのパスタとビスコッティのお土産の提供があり、参加者は笑顔で会場を後にしました。「教育と連帯」をキーワードに、持続可能な組織と社会の在り方について、参加者がそれぞれの考えを深める1日となったようです。

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