長年、経営企画や人事に携わる立場にいながら、三浦孝文さんはこう言います。
「僕はいまだに、人事ってよくわからないんです」
三浦さんはクックパッドの人事やオイシックス・ラ大地の人事や経営企画の責任者を務め、現在はボンディッシュ株式会社へ出向。経営企画と人事の両面から組織づくりに関わっている方。
それでも「わからない」と言い切る。その言葉には、謙遜とは違う意味がありました。
今回は、人事の寺子屋の第1期の卒業生である三浦さんに話を聞き、学びがどう根を張り、どんなふうにその後の仕事や活動へつながっていったのか、聞かせてもらいました。
本記事は、カンパニーエディター(エドゥカーレ)が取材・編集を担当。
じっくり話を聞きながら、人事の寺子屋のその後に続く物語をたどっていきます。
取材・編集/エドゥカーレ
お話を伺った人

三浦孝文
大分県別府市出身。㍿D2C、クックパッド㍿を経て、17年よりオイシックス・ラ・大地㍿。人材企画室や経営企画部の責任者の後、24年2月からボンディッシュ㍿へ出向。#人事ごった煮会、 #越境キャリア (#エッキャリ) などコーポレートコミュニティの発起人を務める。
正解のない仕事に放り込まれた新卒時代
──:
三浦さんは、2010年、新卒でインターネット広告会社に入社して、人事を志望したと聞いています。
三浦:
高校・大学と体育会系だったのもあって、昔からチームで戦う、ということへの思いが強かったんです。そういった経験もあって、人の面から組織を強くしたいと思い、営業とかマーケティングとは違った戦い方をしたいなと思って人事を志望しました。
ただ、配属された人事部には、当時は新卒社員はいませんでした。先輩は全員中途。年齢も経験も大きく異なる人たちばかりで。
採用面接への同席やエージェント対応、候補者のフォロー。業務は回っているけれど、胸の奥に引っかかるものがあったんです。
──:
引っかかるもの?
三浦:
これ、合ってるのかなって。
採用も教育も制度も評価も、なんとなく「前からあるもの」をただ回している感覚になってしまって。
合っているのかわからない。自分の軸もない。
それで外へ学びを求めはじめました。そこで出会ったのが、人事の寺子屋だったんです。
寺子屋には熱量があった
三浦:
参加しようっていう動機も、畑さんのことを知って、なんだか面白そうな人だなって。それくらいのレベル感でした。その頃の寺子屋は、たぶん今みたいにきちんと体系化されていなくて、コミュニティ要素が強いというか。
畑さんの人柄とか考え方に惹かれて集まっている人が多かったように思いますね。
自分自身も、きちんと体系化された研修とかを受けるよりは、人事経験が豊富な畑さんのもとで学んでみたいという気持ちが強かったと記憶しています。

──:
当時の寺子屋はどんな感じだったんでしょう?
三浦:
全3回くらいだったと思います。畑さんが用意されたカリキュラムがあるんですが、内容的には対話的な雰囲気で。
あとは何て言うんだろう……。教材に沿って知識を教える、というよりは、在り方とかスタンスに近いものを伝えてくれる。そんなイメージでした。
すごくシンプルに言うと、人事ってすごくエモーショナルなものなんだ、という感じ。エモーショナルっていうのは、畑さん自身が体現している、人や組織に対する愛情みたいなもの。
──:
人や組織への愛情。
三浦:
はい。誤解を恐れずに言うと、怒ってたんですよね(笑)。
当時の畑さんは組織とか会社というものに対して、なんか怒ってました。いい意味で、ですよ。
ご本人はそう思ってないかもしれないですが、僕から見た畑さんは、すごく感情が出ていた印象でした。だからこそ人事への思いとかスタンスが伝わってきた感じ。
それが衝撃を受けたことでしたね。

三浦:
あのときは3回シリーズだったので、今ほどの濃い内容ではなかったかもしれませんが、テキストを使って学んだり、研修を設計するワークもあったり。実務事例とかを出して話してくださったのがすごく記憶に残っていますね。
そこに感情が乗っかっているから、なおのこと記憶に残りました。
──:
学んだことに対して、なにか腑に落ちないとか、理解できないことはありましたか?
三浦:
それはなかったです。
当時は僕も新卒で若かったので、すごく素直に吸収したんじゃないかなと思います。スポンジみたいに。今思うと、その在り方がよかったのかもしれないですね。
「わからない」と言えるようになった
三浦:
僕はいまだに、人事ってよくわからないと思っています。
わかっていないというか、わかろうとしてもわかりきらないものなんだろうなと、どこかで思っている。そんな感覚です。
どうしてかというと、人も組織も、毎日違うじゃないですか。
昨日刺さった言葉が、今日は刺さらない。昨日元気だった人が、今日は具合が悪かったり、気分が沈んでいたりする。そういう個々人が集まって、組織になり、会社になる。
わからないなっていうことが、わかるようになったのかもしれないですね。
だから毎回問い直すしかなくて。この会社にとってどうか、この人にとってどうか。
わからなさを前提にする。わかった気にならない。
それが、いまのスタンスです。
──:
異業種のいろんな人たちと一緒に学ぶ価値はありましたか?
三浦:
ありました。
多様な職種の人たちがいて、国籍とかLGBTQとかもさまざまで。そのなかでも多様なだけではダメだと思うんです。
一つの共通項、柱があること。人事の寺子屋で言うと、畑さんのスタンス、愛情ですよね。畑さんのような人の存在は欠かせない。
多様性には求心力が必要なので、畑さんのように愛情があり、熱がある人がいることが大事だと思うんです。それがないと、多様であってもバラバラになってしまうんじゃないかな。

「越境キャリア」という実験
──:
三浦さんは福岡で「越境キャリア」という学び場を立ち上げていますよね。
三浦:
そうなんです。越境キャリアが目指しているのは、福岡、九州でコーポレート領域に向き合うビジネスパーソンが誇りを持って働くこと。
九州企業が存在価値を高め、就職の選択肢として魅力的な存在になる社会の実現を目指しています。
具体的には、事務局リードで月1、2回前後のオフラインでの勉強会や交流会を軸に、オンライン(Slackコミュニティ)で日々参加者同士で学びあったり、つながれる場をつくっています。
加えて、参加者からの企画や、悩み相談にも事務局がメンター的にサポートできるようにしていて。
人事とか経営企画とか広報とか。会社の根幹を担う人たちが福岡の中で出会い、いろいろ会話したり知恵を共有したりすることで、自分の会社とか、キャリア、所属する企業の人たちに還元できるものが生まれるんじゃないかなと。
実際に、越境キャリアの活動からさまざまなイベントが開催されています。
異なる職種や役割、意思決定の背景が交わることで、自分が無意識に前提としてきた考えや判断軸が少し揺らぐ。越境キャリアが大切にしているのは、そんな「視点がずれる瞬間」が生まれる時間です。

三浦:
その濃度と熱量みたいなものが濃い場所を、福岡で作りたかったというのが大きかったです。
もう一つ思っているのが、人と人の出会いが大事なんだということ。
──:
人と人の出会い、ですか。
三浦:
僕は人事のポテンシャルは理解しているつもりなんですが、人事だけじゃ経営ってできない。
ファイナンスや事業、営業やカスタマーサポートとか。経営って総合格闘技ですよね。人事はそのなかのひとつの要素であって、すべてではない。
ただ人事が越境することで全体のパフォーマンスを上げられると思うんです。例えば他職種や経営陣のことを人事が知る。
知ることで、それぞれの社員のパフォーマンス向上に寄与したり、チームづくりができるのがが、人事かなと。
だからこそ、人事はもっといろんな人と会って、多くの現場を知ったほうがいいんじゃないかなと感じています。
人事部って、会社の中では閉鎖的な部署をイメージする他部署の人もまだまだ多いのかなと思ってて。。
そうじゃなくて、もっと活発に人と人が越境して出会って、創発される機会が必要で。
実は僕、高校まで理数科で、大学で文学部文化歴史学科日本史専修に変わったんですよ。日本史を学んでいると、幕末や明治維新とか歴史の大きな節目の中には、人と人の出会いっていうのが必ずあって、そこから物事が大きく動き出すことが多いんです。
だから今は、そういう出会いが生まれる場をどうつくるか。そこがすごく大事なんじゃないかと思ってます。
人事に正解はない。
だからこそ、人と語り合い、問いを持つ場が必要なのかもしれません。
人事の寺子屋での学びは、教室の中だけで終わるものではなく、それぞれの現場へと持ち帰られる。そして、それぞれの現場で問いのタネが育ち、花が咲く。
三浦さんの歩みから、人事の持つ大きなポテンシャルとともに、問いを育て続ける大切さを感じました。
人事の寺子屋は、明確な答えを教えてくれるものではありません。それぞれがタネを持ち帰り、それぞれの答えを咲かせる。そんな場なのだと思います。

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