“人”から始めるレストラン改革。シチリアで見つけた経営のヒント|フィーコディンディア 横井さん・森山さん【人事の寺子屋・卒業生の声】

小田急線・本厚木駅からほど近い、商店と住宅が入り混じる雑多な街並みの一角に、地中海の陽光を宿す一軒のレストランがあります。シチリア料理店「フィーコディンディア」。

開業から16年目を迎えるこの人気店の物語は、代表取締役である横井さんが若き日にシチリアで深く心に刻んだ、人々の温かな人間模様からはじまりました。

横井さんと共にお店を支えているのが、マネージャー兼ソムリエの森山さん。経営の波に揉まれ、時には人との関係性に見えざる壁を感じることもあった二人。そんな折、友人である岩澤正和さんがオーナーを務める「PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO」の成功の裏に「人事の寺子屋」の存在を知り、その門を叩くことになります。

本記事は、カンパニーエディター(エドゥカーレ)が取材・編集を担当。

「人事の寺子屋」での学びを通じて、フィーコディンディアという場所が、人が輝き、笑顔が生まれるレストランへとどのように変化していったのか。そのプロセスを、マネージャー兼ソムリエの森山さんとオーナーの横井さんへのインタビューを通じて紐解いていきます。

​取材・編集 / エドゥカーレ

お話を伺った人

横井拓広

イタリア料理におけるデザートの重要性を考え調理師学校・製菓学校を卒業後、7年間パティシエとして経験を積む。27歳で本格的に料理の世界へ。3度に渡るシチリア修業や「トラットリア ダ トンマズィーノ」などでの修業を経て2009年現店開店。

森山圭子(写真中央)

シチリア料理店「フィーコディンディア」マネージャー兼ソムリエ。スタッフとの関係に悩んでいた頃、「人事の寺子屋」と出合い、人の在り方や組織づくりを学ぶ。以来、1on1面談や対話を重ね、スタッフもお客さんも笑顔でいられるお店づくりを追求。人の力を信じ、幸せが連鎖するレストランを支えている。

関わる人みんなが温かく、お客さんに笑顔で帰ってもらえるシチリア料理店をつくりたい

お店をオープンするきっかけとなったのは、代表の横井さんが、以前働いていたお店で森山さんと出会い、一緒にレストランをしないか、と誘いを受けたことだったそう。

フィーコディンディアはイタリアンのなかでもシチリア料理専門のお店。その根底には、横井さんが若い頃に大きな影響を受けたシチリアの存在がありました。

横井:
「料理が自分に合っていたのもありましたが、決め手はやはり『人』だったんですよね。シチリアの人たち。なんでしょう……関わる人みんなが温かくて、常に人のことを考えて行動している。そこに感銘を受けたし、自分がシチリア料理をやっていきたいという思いにもつながっていきました。」

シチリア料理と聞くと、新鮮な魚介類やナッツを使った料理、というイメージ。ただ横井さんにお店のこだわりを聞くと、意外にも料理の話ではなく、「お客さんに笑顔で帰ってもらえるようなお店」と答えてくれた。

そう考えるようになったのも「人事の寺子屋」での経験が大きかったという。

横井:
「友人である岩澤さんが経営するPIZZERIA GITALIA DA FILIPPOが大好きで。料理はもちろん、お店の雰囲気もすごく心地いいんです。彼が、人事の寺子屋で学んだことを店に生かしているっていう話をしてくれて。すぐに僕も食いつきました。」

どうしてそんなに興味が湧いたんでしょうか?

横井:
「なんでだろう……一つは岩澤さんのお店が好きだからですかね(笑)。みんながすごくいい笑顔で、僕らが目指したいお店の要素が詰まっているレストランだと感じました」

トップの在り方から考えなければいけない。
そう気づかせてくれたのが、人事の寺子屋だった

話を聞いて、一週間も経たないうちに森山さんと二人で申し込んだ横井さん。そこには、フィーコディンディアが抱える課題がありました。

横井:
「5年ほどお店をしていると、いいときもあればわるいときもある。それは売上もそうだし、スタッフの体制だったり人間関係だったり。いろんな波があるわけです。以前はそれについて深く考えずに、原因を働くスタッフとか外部の環境とか、自分たち以外のところに置いていたんです。」

森山さんもそれを聞いてうなずく。

森山:
「私も当時はスタッフとの人間関係とかで悩んでいたこともあって。できるはずだとか、こうしなきゃいけないとか。他人に対して強く求める思いがあったんです。でも実際は一人ひとり個性がちがうし、得意分野も違う。それは寺子屋で学ばせてもらって気づいたことの一つでしたね」

寺子屋での学びのなかでも、特に印象に残っている言葉があると横井さん。

それが「いい会社には、いい空気が流れている。だから入った瞬間にわかるんです」という言葉でした。

横井:
「言われてみると、それっていろんな店に行った時に感じるんですよ。じゃあ僕らの店はどうなんだろう、なにを大切にしているんだろうって、真剣に考えるきっかけになりましたね。寺子屋の学びはすごくわかりやすかったです。気づきがすごく多い。目から鱗状態っていうか、腑に落ちることがたくさんあるんです。こういうふうにやればいい、だけじゃなくて、それを誰がやって、その人が何を大切にしているのか。つまり、人間の在り方に注目するようになってくるんです。」

人間の在り方、というと?

横井:
「たとえば評価制度をつくるトップがまずどういう人間なのか、ということが大事で。自分ができていないのに、それをスタッフにやらせるっておかしいじゃないですか。つまりトップの在り方から考えなければいけない。そういうことに気づかせてくれたのが、人事の寺子屋だったなって。話を聞いていて反省ばっかりでした(笑)。自分のことを経営者って言っていたのが恥ずかしくなって。僕は経営なんかしていなかったんだって思いましたね。」

人間の在り方を見る。経営のトップとして自分を顧みるのはもちろん、スタッフそれぞれの在り方についても知ろうとするようになったと横井さん。今はスタッフとの面談の時間を大切にしているそう。

横井:
「今は森山がスタッフと1on1をしています。会社のことをどういうふうに思っているのか、どんなことをしたいのか、会社に対する思いは何か。スタッフの気持ちをちゃんと聞くようになりました。スタッフが求めることを知り、それを与えていかないとお店になにも還元されない。スタッフたちが求めていることに対して投資をしていく。この投資の考え方も寺子屋で学んだ大きなことでしたね。」

たとえばスタッフの声から、働きやすいようにハード面の投資をするなど。一人ひとりの意見を形にすることで、お店全体にとっても、雰囲気の良さや売上の向上といった形で返ってくるのだとか。

驚くことに、人事の寺子屋に行ってから、お店の売り上げは過去最高をずっと更新し続けています

森山:
「スタッフもいろいろな在り方を持っていて。お金を得るためとか、休みの日に自分の趣味に使うためとか。それを踏まえた上で、この仕事に誇りを持って、楽しんでほしい。そしてお客様にも喜んでいただいて、笑顔で帰ってもらえるお店にできたら、スタッフたちも幸せだと思うんです。そのために私たちが健全な土壌を作って、スタッフたちを支援しながら会社を盛り上げていくのが今の大きな思いです。」

働くことで、スタッフにどう役立てるかを考えるようになりました

とはいえ、寺子屋での学びは簡単なことばかりではなかったと森山さん。講義の最初に「人事とは何だと思いますか?」と問われたときも、正直に「わかりません」と答えたほど、知識もない状態からのスタートでした。

そこから必死に学び続け、人事とは、言ってしまえば経営そのものでもあり、会社と人をつなげるバランスを取る役割もある。人事がなければ会社は成り立たないことを学んだそう

森山:
「人との関わり方は根本的に変わりました。仕事でもプライベートのことでも、スタッフの話をよく聞くようになって。そうするといろんな話をしてくれるようになるんですよ。以前はトップから伝えるだけだったのが、スタッフ側からいろんな話をしてくれるようになったので、会話が増えて和やかな雰囲気になったし、それがお店の空気感にもあらわれてくる。あとね、スタッフの家族がよくきてくださるんですよ(笑)。カウンターに親御さんとかおばあちゃんとかが座って、目の前で働く息子や孫たちを見て。そんな光景は、私たちも見ていて嬉しいですよね。」

横井:
「ほかに変わったことは、スタッフを募集するときにうちで働いてもらうっていう感覚だったのが、絶対うちで働いたほうが自分のためになるよっていう感覚に変わりましたうちで働くことで、スタッフにどう役立てるかっていうことを考えるようになったことが大きいと思うんですけど。それをやっていくうちに自信がついてきたんでしょうね。」

文化、料理、サスティナビリティなど、スタッフたちと多くの学びを共にしました
シチリア研修5日目

人事の寺子屋で学びを深めながら、その成果でスタッフたちと学びを深める8日間のシチリア研修へ。文化、料理、サスティナビリティなど、スタッフたちと多くの学びを共にしました。

ほかにも、飲食店として大きく変わったことがあるといいます。

横井:
「飲食店って、料理がおいしければお客さんが来るわけじゃない。料理が美味しい以外のところで何を大切にしているのか、っていうのが大きいと思っていて。前は料理のことばっかり教えてきたんですけど、今は料理半分くらいで、それ以外のことが半分。自分はどう在りたいかとか、何を大切にしたいかとか、スタッフの話を聞いて引き出す。そしてお店の大切にしたいことも伝える。それを繰り返すと、スタッフたちも自分の働く意義とか、お店が大切にしていることを口に出すようになってくる。むしろ料理以外のことのほうが大事なんですよね。味が美味しいお店はたくさんあるので」

元気に幸せになれるシチリア料理店をめざして。食、レストランを通して、お客さんもスタッフも幸せになってほしい

フィーコディンディアを、これからどんなお店にしていきたいですか。

横井:
「規模を大きくしていきたいっていうのはなくて。関わるお客様やスタッフに、自分たちがどう役立てるのかなっていうことに関心があります。飲食店を通して本当にいろんなことに貢献していけるっていうことは、人生のテーマになったし、寺子屋に行かなかったら考えていなかったと思いますね」

続けて森山さんも。

森山:
「思いは変わっていなくって。私たちは食、レストランを通して、お客さんもスタッフも幸せになってほしい。立ち上げた時から、元気に幸せになれるシチリア料理店っていうのを目指していたんですけど、その気持ちが前よりも強くなりました。いろんな学びの機会があると思うんですが、私は人事の寺子屋が一番心に響いた気がします。自分たちの在り方も、スタッフに対する意識も確実に変わりましたね」

人事の寺子屋での学びは、フィーコディンディアの二人にとってまさに目からウロコで、お店が確実に変わるきっかけとなった体験でした。

シチリアの情熱と、人事の智慧が融合し生まれた「人」を核とした経営。今回の事例では、人事の考え方一つで、ビジネスの成長と人の幸福を高め得る可能性が垣間見えました。

人事の力と、フィーコディンディアのこれからに目が離せません。

<フィーコディンディア 店舗情報>
・電話予約・お問い合わせ:046 265 0297
・ウェブ予約・空席確認はこちら
・営業時間:
 ランチ 11:30 – 15:00 (LO. 14:00)
 ディナー 17:30 – 22:00(LO. 21:00)
・休業日:月曜定休(祝日の場合は営業翌火曜休業)
・住所:〒243-0014 神奈川県厚木市旭町 1-24-16 google MAP

写真提供:フィーコディンディア

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