「赤ペンレポートって、どんなものなんですか?」
三浦さんの回でも触れた、人事の寺子屋での大切な要素のひとつ、「赤ペンレポート」。
毎回の授業の感想や、わかったこと、わからなかったことなど。受講生が素直に書き綴る。
レポートのなかでどんな世界がつくりだされているのか。今回は講師の畑さん、岩崎さんに話を聞きました。
本記事は、カンパニーエディター(エドゥカーレ)が取材・編集を担当。
名前だけ聞くと、どこか厳しそうにも思える「赤ペンレポート」。
けれど実際には、少し違うもののようです。
取材・編集/エドゥカーレ
“赤ペン”という名前だけど
──:
赤ペンレポートって、最初はどんなものか正直イメージがついていなくて。実際に見せてもらって、印象が変わりました。
「赤ペン」だけど赤色で添削されるわけではなくて。書かれていることに対して、畑さん、岩崎さんの素直で具体的なフィードバックが書かれている、しかも温度感を感じる、というか。
それぞれの授業の感想と、悩んでることとか質問に対しても、本当に具体的に答えてくれる。
なんだか、手紙のやりとりみたいだなと。
畑:
そう、わたしは「往復書簡」って言ってますね。
ただ感想に対して返すだけじゃなくて、あたたかさも感じてもらえるように。返ってきたときに、読みたいって思ってもらえるものだといいなと。
学校の課題じゃないので、出したくなかったら出さなくていいとも言ってるんです。
ただ、せっかくだから、もし本当に忙しくて書けなくても、1行でもいいから書いてねって。「今、苦しくて書けないんです」でもいいから。
0は0にしかならないけど、0.01でも何か発信してくれれば、それに対してこちらは返信ができる。
それはみなさんに伝えていることです。
一人ひとりに対して書く
岩崎:
順番的には、私が先に書いて、そのあとに畑さんが書く、というのがいつものパターンですね。あと当然ですが、全員に同じようなことを書いてるわけではなくて。
その人がどういうふうに解釈しているのか。赤ペンレポートに書いている内容を見ながら想像しています。
「こういうことを感じてるんだな」とか、「多分この部分はあんまり反応していないな」とか。そんなことを考えながら書いています。
──:
授業をどう受け止めているかを想像していると。
岩崎:
そうですね。講義で話してる内容って2時間ちょっとあるので、なかなかその場だけだと消化しきれないと思っていて。
いったん赤ペンレポートで吐き出してもらう。「わかんなかった」とか「おもしろかった」とか「つまんない」とか。
それを出してもらうことで、もう一回フォローができる。そういう意味で、やっぱり必要なものだなと思っています。

畑:
ただ、本当にしんどいんですよ(笑)。
第一期のときは1人で20名分書いていました。3回コースだったからできた、というのはありましたね。
今もやっぱり、一人ひとりと向き合って、書いてくれた内容を理解しながら書くっていうのは、相当パワーがいるので。かなり体力を使いますね。
──:
たしかに、相当パワーが必要だと感じます。
畑:
最初の頃は、前に書いた内容と重ならないように、全部読み返しながら書いていたんです。けれど、それはもう無理だなと途中で思って。
寺子屋では「頭で考え、心で感じる」ことを大切にしているので、今は私もその回で感じたことを、心の思うままに書くようにしています。前に書いたことと被っていても、それは被るくらい大事なこと、伝えたいことだと思っています。
否定から入らない
岩崎:
「赤ペン」という名前なんですけど、基本的に否定的なことは書いていないんですよ。
大事なのは、前向きな気持ちになってもらうこと。
最初はいいところをなるべく書く。「ここはうまく理解できている」とか「すごいですよ」とか。
で、最後に「ここが直るともっと良くなるよね」みたいな。
──:
いわゆる直接人と接するマネジメントと同じような感じなんですね。
岩崎:
そうですね、赤ペンレポートを通してマネジメントしてるイメージ。
たとえば自分の部署の人たちに対して、「どんな状態なのか」「何が壁になってるのか」「どうやったら良くなるのか」って考えるのと似ています。
その人がどう変わっていけるのか、仕事がどう変わっていくのか。そこを意識して書いています。
畑:
あと、私と岩崎さんだけじゃないんです。実は3人で受講生のみなさんのことを見ているんですよね。事務局の佐藤さんっていう人なんですけど。
授業中の様子も見ているし、終わったあとに「今回ちょっと理解できてなかったかな」とか
「ここは反応が良かったよね」とか、「何か悩みがありそうだね」とかずっと話しています。
そういう情報があるから、レポートを書くときにも言葉が自然と出てくるんですよね。
「見ているよ」というメッセージ
畑:
第一期から赤ペンレポートをしているんですけど、何のために、っていうと、たくさん目的があって。
一つはやっぱり「あなたのことを見てるよ」っていう気持ちを伝えること。
──:
あなたのことを見ている。
畑:
特に経営者の方って、なかなかフィードバックをもらう機会がないんです。他人にフィードバックをすることはあっても。
でも、実はみんな褒められたがっているし、愛情も欲している。
だから「こんなに丁寧に向き合ってくれるんだ」って、うれしい気持ちになると言ってくれる方が多いですね。
寺子屋自体がマネジメントを学ぶ場なので、こうやって声をかけられたらうれしいな、とか、こうやって話を聞いてもらったらうれしいな、とか。
それを自分自身で体験するというか。ここで実感してもらうことで、「自分もやってみよう」と思ってもらう。そんなことも目指しています。

──:
以前聞かせてもらった話の中で、終わったあとにレポートを読み返すことがある、という卒業生の方もいらっしゃると。
畑:
そうなんですよ。私もそういった使い方をしてくれるんだって驚きました。赤ペンレポートを大事に取っていてくれて、何かあるときに読み返すっておっしゃるんですよね。
特に、落ち込んだり悩んだりしたときに。
自分のいいところとかが書いてあると、「あ、ここが自分の長所だったんだ」って再認識できて、元気をもらえるとか。
岩崎:
寺子屋から時間が経ったら、その人の置かれている環境もどんどん変わっていくから、同じ文章でも、また違う意味で見えてくるんだと思いますね。
──:
レポートで印象に残っている人はいますか?
畑:
受講生一人ひとりにも、赤ペンレポートにも、それぞれに印象的なエピソードがあり、本当は一つに選ぶのが難しいのですが。あえて挙げるとすると、今回受講してくれた方のことが思い浮かびます。
ちょうど寺子屋の期間中に転職し、人事責任者・執行役員として難易度の高い環境に飛び込まれた方で。現場の混乱や組織課題に直面しながらも、逃げずに向き合い続けている姿がとても印象的でした。
最終回のレポート後にいただいたメールの中で、「赤ペンレポートのコメントを読み返して号泣していました(笑)。でも、不思議と今の状況から逃げようという気にならないのは、寺子屋のおかげだと思います」と書いてくださっていて、その言葉がとても心に残っています。
加えて、「寺子屋が精神安定剤のような存在だった」とも添えてくださり、胸が熱くなりました。
寺子屋は答えを教える場ではありませんが、迷いながらでも前に進もうとする人にとって、考え続けるための支えにはなれているのかなと感じています。
あとは身内の話で恐縮なんですけど、義理の兄にも参加してもらったんです。
兄は最愛の妻(私の義姉)を病気で亡くして、当時は仕事に打ち込むことしかできないような状態でした。新卒からずっと同じ会社にいて、社外の人ともあまり接点がなかったようですし、学ぶことも好きだから、気分転換にでもなればと思い、誘いました。
寺子屋に来て、会社以外の仲間ができて、本当に楽しそうでした。
赤ペンレポートも含めて、寺子屋がすごく良かったと言ってくれて。寺子屋が転機になって、最年少で役員になり、今は支社長をしています。。
恥ずかしながら、兄に断って赤ペンレポートを両親に見せたんですよ。両親は息子が辛い状況にあることに心を痛めていましたので。。赤ペンレポートを読んで、すごく両親も喜んでいました。
なんか身内の話なんで恐縮なんですけど。そこから兄は少しずつ元気になったように思います。仲間の存在がとても大きかったようです。そんなことがありましたね。
ライブであること
──:
畑さんが始めた赤ペンレポートですが、岩崎さんから見て、今後赤ペンレポートをもっとこうしていきたい、と考えていることはありますか?
岩崎:
それはあんまりないですね。赤ペンレポートって「生もの」なんで。
──:
生もの、ですか。
岩崎:
相手がどう変わるかによって、こっちも変わる。ぶっつけ本番なんです。その人自身も毎回変わっていくし、こちらも感じていることが少しずつ変わる。
だから必ず毎回違うものになるわけで。形式をどうこうというより、ライブ感を大事に続けていきたいなと思っています。
仕事は面白いものになる
岩崎:
もうひとつ僕らが大事だと思っているのが、「仕事ってこんな面白いんだ」と感じてもらうことなんですよ。
多くの人が、仕事ってつらいものだと思っているじゃないですか。いろんな人の話を聞いたりすると、本当にそう感じることが多くて。
でも、自分がなにか声をかけてあげたり、手を差し伸べたりすることで、まわりの人たちの表情が明るくなって、楽しそうになると、マネジメントっておもしろいなって思える。
そうやって、自分の仕事のおもしろさを発掘してもらうというか。見つけてもらえたらいいなと思ってます。
畑:
そうそう。だから寺子屋のときも、私たち自身が楽しそうにしていることもすごく大事で。
仕事って楽しいんだよ、働くっていいことだよ、っていうのを、実際にやって見せる。
赤ペンレポートを書くのはけっこう辛いんですよ、本当に(笑)。鶴の恩返しの鶴の気持ちで書いています。
でも、それでも絶対やめないって決めてるのは、私たちも受講生から喜びや学びをもらっているからだなって思います。
赤ペンレポートは、添削ではなく、心と心のやりとり。
そのとき感じたことを書き、それに対してまた言葉が返ってくる。「往復書簡」のなかで、人と組織の理解が深まっていく。
そしてもう一つ。そこには、はっきりとしたメッセージがありました。
「あなたのことを、見ているよ」
その言葉が、誰かの仕事や、誰かのこれからを、少しだけ変えているのかもしれません。

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