「年齢も経験も関係なく、人と組織のマネジメントを学べる場をつくる」
そんな想いから生まれたのが、HOPの「人事の寺子屋」です。
これまでのコラムでは、フィーコディンディアの横井さん、森山さん、そして住友商事の望月さんといった「人事の寺子屋」卒業生の声を紹介してきました。
今回はその「人事の寺子屋」が、どのようなきっかけで始まり、どんな歩みをたどってきたのか。
畑さん、岩崎さんに振り返ってもらい、あらためて言葉にしてみました。
本記事は、カンパニーエディター(エドゥカーレ)が取材・編集を担当。
「人事の寺子屋」に込められた想いが伝わり、興味があっても参加を迷っている人の背中を優しく押すようなお話です。ぜひ読んでみてください。
取材・編集/エドゥカーレ
人事を学ぶ場所が、どこにもなかった
人事の寺子屋が始まったのは、2013年。HOP設立に先立つこと5年前、株式会社スマイルズ時代の畑さんが、自身のライフワークとして企画したのがスタートだったそう。
畑:
着想のきっかけは、良い人事の人材がいれば良い会社がもっと増えるのに、と強く感じていたことでした。
スマイルズで人事の責任者をしていたとき、人事部のマネージャーを採用しようとして。700名くらい応募があったのですが、採用しなかった。というか、できなかったんです。
──:
できなかった?
畑:
そう。応募要件を満たした人が、一人もいなかったんです。
その後も面接をたくさんしましたが、人事の本質を理解している人って世の中にこんなに少ないんだ、って。もっというと、人事について学べる場所がないんだと感じて。
それで、当時、採用支援の会社を経営していた菊池龍之さんの提案もあり、自分で人事の学校をつくろうと思ったのが最初のきっかけでした。
──:
第一期の参加者は20人ほどだったそうですね。
畑:
はい。第一期の卒業生のなかには、今では経営者として成功した方や起業して自分の会社を立ち上げた方、鹿児島で同じような学びの場を運営している方もいて、みんなそれぞれに活躍しています。
人事の仕事は範囲がとても広く、人が相手なので同じ答えで間に合わせることができない。中途採用だから即戦力だ、できるのが当たり前だっていうのも、実際には難しい。
中途で、人事の知識と経験を有し、人間性が優れ、あらゆる事態に対応ができる能力を備えた人を採用しようとすれば、相当の費用を覚悟する必要がある。採用の難易度も高いですし、人事を学んで能力を身につけた人は少ない。
私自身は公務員時代、3ヶ月間、学校に入り人事を学んで今の基礎があります。だからこそ、人事の寺子屋のような学校が必要だと思っているんです。
私の中には、マネジメントをする人は誰もが人事を学び続ける必要がある、という考えがあって。それは今も根本的には変わっていないですね。
人事は経営そのものだ
──:
2018年に岩崎さんとHOPを立ち上げたあとに、スマイルズ時代の人事の寺子屋を継承して、今に至るわけですね。岩崎さんが加わって、寺子屋にも変化が生まれた。
当時、岩崎さんは寺子屋のことをどう思っていたのでしょう。
岩崎:
人事というのは、カバーする範囲がすごく広いんです。僕は、人事は経営そのものだと思っていて。
畑さんと初めて会った時に、「私は人事が専門です」と言っていたんですよね。「へー、人事の専門家って、いるんだ」なんて、失礼な発言をして、畑さんに怒られた記憶があります(笑)。
私が長く勤めた総合商社では、人事部門はトップから現場まで、みな他部門の出身者で構成されていて、ローテーションの一環として、人事の仕事を4、5年やる。そういう考え方だったんですね。
そんな畑さんが「人事の寺子屋をまたやりたい」って言うんだから、それはいいよね、すぐやろうとなりました。

なぜ「寺子屋」なのか
──:
人事の「寺子屋」と名付けた理由はあったんでしょうか?
畑:
私は基本的に、大きいものがあまり好きではないんです。小学校の1クラス40名という規模も嫌いでした(笑)。一人ひとりの個性や感情がわかる規模が好きなんですね。
それと、自由に学びたい思いが強いんだと思います。子どもの頃に読んでた本も、黒柳徹子さんの『窓際のトットちゃん』とか、宮城まり子さんの「ねむの木学園」とか、デ・アミーチスの『クオレ 愛の学校』とか。学校に関わるものが多くて。
幼少期、学校が嫌いだったので、自分が通っていた学校とは違うタイプの学校を求めていたんだと思います。
──:
もっと手作り感というか、顔が見えるような、ということでしょうか?
畑:
そうですね。個性を封じて、大量生産して、出る杭は打たれる、みたいなことが嫌だったのかな。一人ひとりが違うのにって。
あと、子どもの頃から伝記が大好きで、人にとにかく興味があった。
家族でレストランに行っても、他の家族をずっと観察して、あのお父さんはこういう性格だとか言って、母に怒られてましたね(笑)。
それだけ人に興味を持つのは、畑さんが愛情深い証拠だよって言ってくれる人もいますが、自分ではわかりません。
ただ、人に興味があるところは、ずっと変わってないんです。
岩崎:
一人ひとりの顔がちゃんと見えることにこだわりを持っていたから、「寺子屋」という名前をつけたんでしょうね。人の顔が見えないような学びはしたくないと。
今もずっと少人数制で、オフラインで顔を見ながら話すことにこだわっているのは、そういうことなんだと思います。
年齢も経験も関係なく、誰もが学べる場へ
──:
HOPで人事の寺子屋を再開した当初はどんなことがあったのでしょう。
畑:
最初は、経営者は経営者だけのクラスで、というように分けていたんです。でも結局、一本化することにしました。
本質的な内容であればあるほど、年齢も経験も関係なく誰もが学べる、ということに気づいたんです。
回数を重ねる中で、理念、仕組み、実践の三位一体が大事であることもしっかり言語化できるようになりました。これは、人と組織を動かすうえで、とても重要なことなんです。
岩崎さんの理念の話と、私の実践的な話がリンクできない人もいましたが、改良してきた今のカリキュラムは、理念、仕組み、実践がわかりやすくつながって、良い感じに整えられてきたなと感じています。

岩崎:
そうですね。僕の話は、かなり抽象的に感じる人もいるかもしれません。この話は現実とどうつながるんだ、って。でも話していることは、すべて実務から学んできたことなんです。
それがだんだんと、理念と制度はどういう関係で、それを実践するには何が必要か、というふうに、つながりが見えやすくなってきました。
これも、ずっと続けてきたからこそ改善された部分だと思います。
理念・制度・実践を一本につなぐ
──:
全6回の人事の寺子屋。どんなことを学ぶのか、少し紹介してもらってもいいでしょうか。
岩崎:
人と組織のマネジメントについて考え、理解を深める。それが人事の寺子屋の目的です。
マネジメントには対象がいろいろあります。会社とか、働くこととか、組織とか。マネジメントする対象をきちんと理解しないと、適切なマネジメントはできません。
そして、部分だけじゃなく、全体像をきちっと頭に入れることがすごく重要です。なので、全体像を正しく把握することの大切さとその方法をDAY1で学びます。
そうして全体像が見えてくると、みんなが会社として見ているものは実は部分的なところなんだっていうことに気づくんですよ。自分の思い込みや常識と本質とのギャップに気づくことで、DAY2以降の話が頭に入ってくるようになります。
──:
なるほど。それが、DAY1の「見ることと考えること」というテーマなんですね。
畑:
それがとても大事なんです。
岩崎:
「見る」って言葉としては簡単ですが、意識しなければ物事は見えません。対象が見えなければ、マネジメントできないわけです。
マネジメントに限らず、人間として自分がどう考え、どう行動するか。その判断軸をつくる第一歩として、「見る」ことが必要なんです。
そして「考える」は、見えているものの裏に隠れてるものは何かを探ることです。
見えないものを捉えようとするのが「考える」ことなんだよっていうのが、DAY1の話。
畑:
あんまり言ったら楽しみが減っちゃいそうですね(笑)。
そのあと、会社、働く、組織へと話は進んでいきますが、私のパートはより実践に近くなります。人事制度について、等級、賃金、評価という流れで、6回を通じて制度の全体像を理解できるような内容にしています。
岩崎:
理念に寄り過ぎないように、実践的な部分とのバランスを意識しています。
──:
DAY3の働くっていうのは?
岩崎:
どうして働くの?っていうことを考えてもらいます。その理由が見えると、「人が働く」ことに対してどうアプローチすべきかが見えてくる。
DAY4の「成長の壁」は、組織の話です。まず組織の仕組みを理解し、その上で、組織に問題が起きるタイミングをどのように乗り越えるか、を考える。
典型的なのは、30人、50人、100人になった時に必ず直面する課題です。壁を乗り越えるにはどういう準備をしたらいいのか。そんな話をします。
学びは、終わってから育っていく
──:
DAY4、DAY5と進むにつれて、どんどん身近な話になっていくのですね。
畑:
面談とか、ハラスメントとか、メンタルヘルスとか、身の回りで起きている重要なことは、都度個別のトピックスとしてお伝えしています。

そしてDAY6は振り返りと修了式。各回の講義の終了後には、懇親会も開催しています。
飲み物や食べ物を用意して、講義の内容や自分の会社で起きていること、時にはプライベートのことまで、みんなで楽しく歓談する時間です。
岩崎:
赤ペンレポートも受講生と講師の間で毎回やりとりしています。講義でわからなかったことや疑問に感じたこと、仕事上の悩みやキャリアの相談まで、自由記述で内容も文量も好きなように書いてもらっていて。
一人ひとりとのやりとりになるので、より個人と向き合えます。
畑:
このレポートが一番面白いんですよ。一人ひとりに赤ペンを書くのはかなり大変なんですけど、皆さんが喜んでくださるので、大切にしてます。
それから、振り返りも大事にしています。一回学んでレポートを書いたからといって、やはり忘れちゃうじゃないですか。
DAY6で最後に講義全体を振り返ることで、カリキュラムの全部がつながっていることに改めて気づくんです。振り返りがすごく良かったっていう声もよく聞きます。
岩崎:
理解の度合いは一人ひとり違うので。最後にまとめて、一回目からこういう話をしてきましたよねって振り返ると、そうだったんだ!って腹落ちするんですよ。
畑:
修了式のときには、一人ひとりに私が選んだ言葉を渡しています。
──:
言葉?
畑:
修了証書に、その人に合った格言や至言を添えてプレゼントするんです。これは第一期のときから続けているんですけど。
これが、皆さん泣かれるんですよ(笑)。その言葉と一緒に私のメッセージもお伝えするので、みんなそれが良かったって言ってくれて嬉しいです。私も自然に涙が出てきます。
──:
もらう側としてはすごく嬉しいですね。
畑:
あと、テキストには余白がたくさんあって。事前に宿題などはなく、その場でテキストを見ながら学んでいく形です。
限られた時間のなかでかなりの量のインプットをするので、パソコンは使わず基本テキストに書き込んでもらいます。書く人は真っ赤になるくらい書き込んでいて、すごいですよ。
第一期の卒業生も未だにデスクに置いておいて、悩んだら見るって言っている人もいますね。もう13年前のテキストなんですけど。赤ペンレポートも、迷ったときに見る、つらいときに読み返すっていう人もいますし。
受講中にテキストに書き込み、振り返ってまた書く。卒業後も必要なときに開けて、今の自分が感じたことを書きとめる。
そんなふうにテキストを育てているっておっしゃる人もいます。面白いですよね。テキストを育てるなんて、最初作ったときには考えてなかったので。
人事に関わっていなくても、来てほしい
──:
2025年の時点で、卒業生がもう150名以上いて、いろんなフィールドで活躍されている。こういうネットワークができるのも人事の寺子屋ならではなんでしょうね。
畑:
狙っているわけではないんですが、私たちが知らないところでも、卒業生同士でいろんなことをしたり、ビジネスにつながったりしている人もいます。
正しいメッセージを伝えていけば、人はひとりでにつながって動き出すんだなって、実感していますね。
今後は卒業生の会も積極的に開いていきたいと思っています。大人の遠足とか修学旅行もやってみたいです。
みんなでどこか博物館でも美術館でもいいけど、何かフィールドワーク的な活動もあってもいいのかなと。そういうことも企画していきたい。
岩崎:
卒業生のネットワークが自然にできていくのはすばらしいことですよね。毎回懇親会でリラックスして話すので、受講生同士が仲良くなるんです。
全然違う業種や年齢の人と交流できるのも、人事の寺子屋の魅力だと思っています。

畑:
そうですね。一回の講義は2時間ちょっと。もっと伝えたいことはあるので、本当は半日かけてやりたいぐらいですけどね。
講義の時間が限られている分、赤ペンレポートと懇親会で、いろんなものが補えていると思います。
人事に関わっていない人でもまったく問題ないので、大人の学びの場として興味がある人には、ぜひ参加してもらいたいです。
人事の寺子屋は、誰かの答えを教える場所ではありません。
一人ひとりが「見て」「考えて」、自分の答えを導き出す判断の軸を磨く場です。
今、少し立ち止まって考えたい。そう思っているあなたに、人事の寺子屋の席はきっと用意されています。

HOPでは、2/10(火)より「抑々塾(そもそも塾)」も開催します。
「働くとは何か」「マネジメントとは何をしているのか」。
抑々塾(そもそも塾)は、そんな根源的な問いを出発点に、ビジネスの前提を問い直す学びの場です。こちらは全6回・単回参加OK・オンライン参加可能です。
答えを急がず、対話を重ねながら考え続けることで、自分自身の思考の輪郭が少しずつ見えてきます。
日々の仕事に違和感や問いを感じている方にこそ、参加してほしい場です。
詳細は下記ページからご覧ください。